シリカを製品開発に取り入れる際は、液中で粒子を均一な状態に保つ「分散」が重要です。分散状態が崩れると、粒子の沈降や凝集、ゲル化などが起こり、目的とする性能を得られない場合があります。
本記事では、シリカ分散の基礎知識をはじめ、凝集を防ぐ方法や分散技術を検討するときのポイントを解説します。
シリカを液中に均一に保つ「シリカ分散」とは
シリカ分散を考えるうえでは、単にシリカと液体を混ぜるだけではなく、粒子が均一な状態をどのように維持するかが重要です。まずは、シリカ分散の基本と安定性について確認します。シリカ粒子を液体中に分散させた状態
シリカ分散とは、細かなシリカ粒子を液体中に均一に存在させることです。コロイダルシリカは、微細なシリカ粒子が液中に分散したもので、半導体ウエハの研磨剤やハードコート剤、セラミックス用途のバインダー、金属表面処理剤など、さまざまな分野で利用されています。
シリカ粒子が均一に存在していれば、材料全体で安定した性能を得るための土台になります。
一方、製造直後には均一に見えていても、時間が経つと粒子が沈降し、液が上下に分かれる場合があるため注意が必要です。
分散状態は製品性能にも影響する
シリカの分散状態が変化すると、最終製品の性能にも影響する可能性があります。実際の特許文献でも、コロイダルシリカが二層に分離した状態でシリコンウエハの研磨に使用すると、研磨の前半と後半で研磨速度に差が生じる問題が示されています。
また、シリカなどの無機粒子を樹脂と組み合わせる場合も分散性が重要です。
三菱ケミカルの試験では、分散剤としてニチゴーGポリマー™を使用することでコロイダルシリカが安定して分散し、透明性や光沢に優れた皮膜を形成できるとされています。
シリカの凝集や沈降を抑える方法
シリカ分散液の品質を保つには、粒子同士が集まったり、沈降したりする状態を抑える必要があります。ここでは、参考資料で示されている分散安定化の考え方を紹介します。pHや処理条件を調整する
シリカの分散では、pHを含めた液の条件を確認しましょう。特許文献でも、pH5~8.5の中性コロイダルシリカ分散液について、製造直後には均一でも、数時間から数日が経過すると一部の粒子が沈降して二層に分離する場合があると説明されています。
また、この二層分離を防ぐ方法として、撹拌しながら炭酸ガスを吹き込む方法や、濃度20重量%以下の酸水溶液を加える方法もあります。処理後もpH6.0~8.1の範囲を保ちながら、分散安定性を高める方法です。
ただし、これは中性コロイダルシリカに対する方法です。シリカの種類や濃度などが異なる場合まで、同じ条件がそのまま適用できるとは限りません。
分散剤を活用する
シリカなどの無機粒子を安定させる方法として、分散剤の使用も検討してください。例えば、三菱ケミカルでは、親水性無機材料に対して分散性を発揮するPVOH系樹脂を紹介しています。少量の添加でもシリカやアルミナなどの親水性無機顔料に対して良好な分散性を示すとされています。
一方、従来の完全けん化PVOHでは、樹脂の結晶性や凝集力によって無機粒子が集まり、塗工膜の透明性が低下する課題があります。
こちらについては、樹脂の結晶性を制御して凝集力を抑えることで、シリカを均一に分散させ、透明性の高い塗工フィルムを形成できるとされています。
シリカの分散技術を検討するときのポイント
シリカ分散液を試作するときは、分散剤だけに注目するのではなく、シリカ濃度やpH、撹拌条件などを含めて検討する必要があります。試験・処理条件から、押さえておきたいポイントを見ていきます。シリカ濃度とpHを確認する
分散条件を決める際は、まず使用するシリカの濃度やpHを把握することが大切です。特許文献では、シリカ濃度10~40重量%、pH5~8.5の中性コロイダルシリカを分散安定化処理の対象としています。シリカ濃度が40重量%を超えると製造時にゲルが発生しやすくなり、液の流動性が失われて分散安定化が難しくなるケースが否定できません。
反対に10重量%未満では、比較的分散安定性が良好になり、二層分離が起こりにくくなるとされています。濃度は製品に必要なシリカ量だけで決めるのではなく、分散状態とのバランスも見ながら検討する必要があります。
撹拌条件をそろえて試作する
分散液の比較試験では、撹拌方法や時間などの条件をそろえることも重要です。具体例を挙げると、三菱ケミカルの試験では、アニオン性コロイダルシリカと樹脂の混合水溶液を作り、ホモジナイザーを使って5,000rpmで5分間分散。その後、PETフィルムへ塗布して105℃で5分間乾燥させ、光沢度や皮膜の状態を確認しています。
また、特許文献の酸水溶液を使った分散安定化処理でも、撹拌状態を維持する必要があるとされています。
条件によっては分散安定化が不十分になったり、ゲル化したりする場合があるため、試作では撹拌速度、温度、添加量などの条件を整理して比較することが重要です。
分散後の状態まで評価する
分散処理を終えた直後だけで判断せず、その後の状態を確認することも欠かせません。中性コロイダルシリカでは、製造直後に均一でも、時間の経過によって沈降や二層分離が発生する例が示されています。そのため、試作時には均一に混ざったかだけではなく、保管後に沈降や分離が起きていないかを確認する視点も必要です。
塗工材料として使用する場合には、皮膜の透明性や光沢など、最終的に求める性能まで含めて分散条件を評価すると、配合や処理条件を検討しやすくなります。
まとめ
シリカ分散では、粒子を液中に均一に存在させるだけでなく、その状態を維持することが重要です。時間の経過による沈降や凝集、二層分離を抑えるには、pHやシリカ濃度、分散剤、撹拌条件などを確認する必要があります。試作では条件をそろえて比較し、分散直後だけでなく保管後の状態や最終製品の性能まで評価することが大切です。使用するシリカや用途に合わせて条件を調整し、安定した分散状態を目指すことが製品開発のポイントになります。